失敗しないミラドライ
1993年と95年においても多額の医療支出をしているのは少数の労働者に限られているし、どの年をとっても、約20%程度の労働者の医療支出が全体の医療支出の90%を占めている。
しかし、このデータはクロスセクションのデータというだけではなく、異時点間の医療支出を分析することが可能である。
そして、多期間のデータを合わせてみても、少数割合の労働者が医療支出の大部分を占めることには変わりない。
だが、毎年その少数割合の労働者の中身が変化しているのである。
つまり、期間を延ばしても医療支出の大半が少数割合の労働者に集中していることには変わりないが、ある年のその少数の労働者が毎年の医療支出を行っているわけではないのである。
ここでは、以前の論文で使用したものと同じ基本モデルを用いる。
ここの最終的な目標は、医療支出を統計的に表し、データの存在する6年間に基づいた医療支出構造を推計し、労働期間全体の総医療支出をシミュレーションすることにある。
はじめにモデルについて説明し、それを用いて医療支出を予測する。
このモデルの重要な特徴は、実際の医療支出の構造をかなりよくとらえている点である。
医療支出モデルの設定今、問題を簡略化するために、医療支出の大半はまれに起こるランダムショックとして説明できると仮定する。
しかし、そのショックはひとたび起きれば数年間は持続することになる。
したがって、医療支出モデルがとらえるべき重要な側面は2つある。
1つは継続する年における医療支出の関係、つまり医療支出の持続性である。
もう1つは医療支出のランダムショックであり、これらはそれ以前の医療支出や、個人の人口学的な特性等では決して説明できないものである。
前年の医療支出がどうであれ、翌年の医療支出の分散は著しく大きい。
それゆえ、ある年で医療支出が仮にゼロであっても、翌年に高額の医療支出をすることがありえる。
同様に、ある年に高額の医療支出をしていたとしても翌年は医療支出が少なくなることもある。
実際、労働期間全体における医療支出の分布は、医療支出の持続性よりもむしろランダムショックとしてとらえられる部分のほうが大きいのである。
ある年において、医療支出がゼロである割合はかなり大きいために、オ年における医療支出額Mtの期待値は、次のように明示したほうが便利である。
医療支出が正である確率は、線形に特定化して推計し、医療支出が正である時の医療支出水準の条件付期待値は、対数線形の形で推計する。
どちらのケースでも、推計式は次の形で表される。
ここにおける分析では、将来の医療支出を予測することに眼目を置いている。
したがって、予測値の当てはまる程度は、個人の特性によってモデルがとらえる医療支出だけではなく、ランダムショックとしてとらえられる医療支出の分布によって決まる。
われわれは、モデルによって予測される医療費分布を実際の医療費分布に可能な限り近づけたいが、どの医療支出の階層をとってもこの分布は著しく歪んでいる。
したがって、この重要な「誤差」部分をノンパラメトリックに扱うことにした。
つまり、ランダムショックEに対して特定の分布を仮定するのではなく、過去の医療支出や人口学的特性をコントロールした後での実際の誤差の分布を用いるのである。
たとえば、3年目の医療支出を、それ以前の1年目と2年目をコントロールして予測することを考えよう。
サンプルは、年齢、性別、雇用形態によっていくつかのグループに分割される。
その分割されたグループを、さらに前年の医療支出水準に応じてそれぞれのサンプル・グループに分割する。
こうして作られた6年目の医療支出の予測値は、次の2つの要素から構成されることになる。
1つは、(式を用いて予測された期待値であり、系統的な要素といえる。
これにより、たとえば、1年目に高額の医療支出をした加入者が5年後には医療支出を大幅に減少させるといった傾向がとらえられる。
2つ目は、この系統的要素の付け加わるランダムショックの要素である。
分割されたグループでの実際の誤差の分布を標本抽出して、それぞれのグループの予測値にランダムショックとして加える。
たとえば、1年目から5年目までに高額の医療支出をした加入者を考えよう。
実際に高額医療支出を行ったグループの1定割合が6年目にも高額医療支出をするのであれば、この方法を用いることにより、シミュレーションをした予測値も同様の割合で高額医療者が発生することになる。
したがって、この方法は時間を通じた医療支出の平均的な関係をとらえるだけでなく、現実に医療支出の持続性があるならば、モデルも同様の特性をとらえることを可能にするのである。
6年目以降の予測値も同様の手続きを繰り返すことで得られる。
この予測値は、われわれの以前の論文と比べると、6年間の長いデータセットが得られたことと、退職者を考慮する余地ができたためにより正確なものとなっている。
だが、1方で、いくつかの限界は存在する。
たとえば、現在の医療支出とその後20年間の医療支出の関係を考えてみよう。
6年間のパネルデータではこれだけ長い関係をとらえることはもちろんできない。
あるいは、他のデータソースを用いて長期間の医療支出の関係をとらえることはできるかもしれない。
たとえば、50歳の心臓病患者が30歳の時に高額医療支出をしていたかどうかを見たいとする。
このような長い期間の関係をとらえるパネルデータは存在しない。
しかし、30歳に高額医療支出をした人のその後5年間の関係はとらえることができる。
また、50歳で高額の医療支出をした人々のそれ以前5年間の医療支出も観察可能である。
両者からいえることは、大体において高額医療支出は持続しないということである。
したがって、われわれの6年間のデータでも、長期間にわたって観察可能なパネルデータを使って得られる分布特性にかなり近いものが得られると考えられる。
また、パラメータの推定結果はこの論文では示さないが、3年間のパネルデータに基づく推定結果は、Eichner,McClellanandWise[1998]に示されている。
予測値の評価以前の論文(Eichner,McCleuanandWise[1998]では、モデルがうまく当てはまるかについて熟考し、実際に良く当てはまった。
とくに、さまざまな年齢における医療支出の分布は実際の分布にかなり近似していた。
したがって、ここではいくつか限られた指標のみを提示するにとどめたい。
ここでは、正の医療支出をしている割合の予測が重要な役割を果たしているので、過去2年間の医療支出と人口学的特性を条件としたうえでの、正の医療支出をしている加入者の予測結果を提示する。
1993年と94年を条件としたうえで、95年に正の医療支出を行った加入者の割合を実際の値と予測値について表したものである。
93年と94年の支出階層に分割して表示してある。
実際の割合と予測した割合が非常に近いことがわかる。
過去3年間に基づいて作成された3年後までの予測値を、実際の値とともに表示している。
予測値は、年齢、性別、雇用形態によって分けてある。
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